枯れた?井戸

やばい。
また明日☆などと書いたくせに、前回の日記から早1ヶ月も月日が流れているっ。
その日の日記。のあの事件。ある日の事、スコンと水が止まってしまったのでした。井戸ポンプはカラカラと凄い音をたてながら空回転し、いつまでも水は上がってこない。
洗いかけの漆喰塗りの道具とポンプを交互に見ながら、頭は今の状況を把握するのを拒否していた。拒否し、思考を停止しながらも身体中に嫌な感じが流れていた。直感で分かった、これはどうにもならないときの感じだ。
観念して、一緒にポンプを据え付けてくださった電気工事屋さんに電話をかけた。電気工事屋さんは飛んできてくれて、あれこれ調べ一言。
「水がない。」
え?????????水が無い? ですか?  あんなに溢れていた水が? ですか? 無いんですね?
いや。あの。ここには週末しか来てなくて、枯れる程使ってないんですけど。
もしかしたら、ポンプの吸い上げ口に不純物が詰まってるかも。
いえいえ、詰まる程使ってないんですけど。
でもそのまえに☆
この井戸水にはもっともっと前から異変が起きていた。水が臭いのです。味にもなんだか少し酸味を感じる。水が出てすぐは無味無臭だったはずなのに。2、3週間後にはそんな風になってしまったのです。
おかしいおかしいと思いつつ、検査に出さなきゃと思いながら、今や検査に出す水すら無くなってしまった。ありえない。
そんな状況の中、刻々と時間だけは流れ仕事に戻らなければいけない時間に。親切な電気工事屋さんに託し、私は福岡へ。それから1週間後、それが前回の日記の日。私のいないところで話は進んでいた。
家に帰ると、敷地には井戸の中を調査した痕跡が。
そこへ電気工事屋さんが現れ。
「中を見てみたけど、詰まってないし、やっぱり水が来よらんね。タライ3杯で止まるばい。ボーリング屋に電話したら、俺が掘ったときは出よったっちゃけん、そんなはずはなか。おまえがつけたポンプが悪かっちゃろうが。おまえがポンプ据えたっちゃけんおまえが最後まで面倒みらなだろうもん。って言いよるばい。自分が工事を途中でほっぽりだして、そんな言い方ってなかって思わん?おいは、やけんちゃんと全部調べた上でポンプじゃなくて水が無いよって言いようのに、自分は見に来もせんで。。。とにかく、13時にここに来るようになっとうけん。絶対負けちゃいかんよ!水が出るまででいくらって約束したんやったらちゃんと出るまで掘ってもらえ。何年も使いよって枯れるならわかるけど、1ヶ月で枯れるなら出たうち入るか。しかも出たっていってもこんな臭い水飲めるか。って言いなさい。もう半分喧嘩みたいになっとうけん。」
え?喧嘩?13時にここに?もう12時まわってるんですけど。
そして迎えた13時。
きっかりにボーリング屋は現れた。顔を見るのは仕事を途中でほっぽり出して以来だ。
水道設備屋さんに電気工事屋さんの弟子も私の為に休日返上で来て頂いて、女だと思って舐めんなよ。というお心遣いなのでした。みんながボーリング屋を囲み、重い空気の中調査が始まりました。
井戸に水量計を投入し蛇口をひねると、朗かに以前より落ちた水圧で水が出始めました。水量計の紐はどんどん下に落ちて行き、そして、丁度タライ3杯目でポンプがからから言い出し、水量計の目盛りは24mを指しました。この井戸は37m。管が入っているのは24mまで。もう届く範囲に水は無いのです。
ボーリング屋さんの”まさか”の顔。「こりゃ本当に水がない。あんなに出てたのに、なんでだ?」
そして、息子に4m管をもってこい。と指示。と同時に私は電気工事屋さんに小屋の中に呼ばれた。
「ボーリング屋は4m管を継ぎ足して、継ぎ足した分で水が寄ってくる時間を稼ごうとしとうけど、それじゃ何の解決にもならんけん、ちゃんとばしっと言わないかんよ。」
て言われても言いにくい。。資材置き場はうちの隣だし。けど、泣き寝入りするわけにはいかないのだ。このボーリング屋、前から態度が超横柄だし。私は意を決して切り出した。まず、水を口に入れてもらう。誰もが感じる変な味をボーリング夫婦は「俺は何も感じないけど。」と言って退ける。
それに私はカチンときた。「あのさあ、おかしかろーもん。味。それにさっきから、ポンプをいじってますけど、100リットルの水を毎秒2リットルずつ50秒で出すのか、1リットルずつ1分40秒かけて出すのか。変えても時間の問題でお風呂に永久に水は溜まらないし、水量を減らして、1個蛇口ひねったら他の蛇口からは水が出ないじゃ意味ないし、炊事しながらお風呂沸かすでしょ?炊事しながら洗濯機回すでしょ?出るまで掘っていくらって約束なんだから、差額払うので掘ってください。」
すると、「は?俺は掘らんし、金も返さんし、知らん!おい帰るぞ。」
奥さんは奥さんで「出るしこでやっていかな。」と言い残して去って行った。
私ははっきり言ってもうどうでも良かった。ただただ面倒くさくて、水が出ない上に面倒な事までする気になれず、このままほっぽり出してしまいたかった。だけど、振り返るとみんなが私以上に怒りでいっぱいになってくれていた。
「あんな言い方ってないよな。別に悪気があったわけではないだろうけど、もっと言い方もあるし、知らんってなんや。お金はもらわないかんけど、もうちょっと掘ってみようか?とかあるやろ。お前がほったんやろうが!俺たちはお前が途中でほっぽり出したけん、何回ここにきた?迷惑料で100万でも200万でも請求してよかっちゃなか。絶対このままじゃいかんよ。お金返してもらわんばよ。」
そう言って帰って行った。
気がつくと隣のおじさまも心配して出てきていた。
「どうしたとね?自分がおらん間いろんな人が来て、なんかしよったけど大丈夫?」
みんなに迷惑をかけている。申し訳ないなあ。
そして、次の日。私は消費者生活センターに電話をした。その次の日には水を水質検査に出し、市の無料弁護士相談に出向いた。もめたくも無いし、お金が欲しい訳でもないのだ。世の妥当な意見を聞いて自分なりの答えを導いた。最後の最後は自分でやらないといけないのだ。
ボーリング屋には消費者センターから指導が入った。ボーリング屋は「俺も本当は悪いと思っとる。し、本当はまだ水を出せる方法も知っとる。お金ば半分返すけん。」と言ったらしい。方法を知っとるならやってくれ。と思うけど、弁護士に依ると掘りたくない人に無理に掘らすことは出来ないらしい。でも、あなたが掘らなかったので別の業者に頼んだらこれくらいかかりましたと請求する事は出来るらしく、でも口約束という最大のミスを犯している私にはもうどうしようもなかった。
早くこの面倒な状況から抜け出したい。水質検査の結果も待たず、私はボーリング代の半分を返してもらうことで全てを終わりにする事を選んだ。そして、それに4万円足して無駄に残ったポンプ代を支払った。集落の誰が見ても無駄にでかいポンプはボーリング屋が初めに選んでいた水中ポンプと値段を合わせる為に、最初はもっと小さなのを勧めていたのに、急にこれじゃないといかんと言い出した代物だ。
そして、最近思い出した。土地の下から掘ってくださいと頼んだ私に、この6m分くらいはサービスするけん上から掘る。と言ったのに6万円のサービスは無かった。そのせいじゃないかなと睨んでいる、水の味がおかしいのは。産業廃棄物で埋め立てられたらしい私の土地。そこを通ってくる水。最初、水の味はおかしくなかった。先週、水質検査の結果が届いた。雑菌が基準の20倍。phが若干酸性に傾いていた。臭い 異常なし、味 異常なし。飲用不可。ふふふ。異常ないんだこの味と臭いは。
ともあれ、少しの洗い物や水撒きは出来る。飲み水はこれまで通りスーパーマーケットのアルカリイオン水。水のなかった頃の大変さを考えると何不自由無い。
ボーリング屋はお金と一緒に手紙を書いてきた。
そこにはこう書かれていたけれど、私はもう掘り足さないことにした。
”自分が安い方がいいと思って、水も出たし、すぐに掘るのを止めたのがいけなかったと思います。もう少し深くまで掘るべきでした。地層は柔らかい真砂土でどんどん掘り進め、あと1日の仕事でした。10mも掘れば自分はここはまだまだ水が出ると思います”